アメリカの20世紀〈上〉1890年~1945年

アメリカの20世紀〈上〉1890年~1945年 (中公新書)
時代性というものに、えらく興味がある。
もっとも私が知っているのは日本の80年代以降ということになる。自分が知らない時代のそれも他国のものとなると、とうぜん本で読むほかないのだが、教科書的な出来事の記述では一般の生活や時代の雰囲気を知ることは難しいのだ。


で、この本なのだが、こちらはかなり一般人の生活や時代背景の変化について描かれている。そのぶん、これが本当なのかどうかという点では疑問が残る部分もあるのだが、それはおいておいてなかなかに面白い。


19世紀末から20世紀前半にかけての特徴というと、工業の発展によって中間層が誕生したことだと思う。多数派が経済的にやや余裕が生まれるようになった初めての世代であり、今日につながる大衆消費が行われることになったのだ。女性や黒人に選挙権がなく、都市部にスラムが発生するなど、日本とはだいぶ背景が異なる。
自動車が中間層でも買えるようになり、またスポーツや映画といった娯楽も浸透し始めたが、貧富の差は拡大したままだった。
新しく生まれた中間層は多数派であり経済の中枢を担うで役目もあるため、政治も顔色を伺うし、また彼らも組合を作るなど集団で政治に働きかけを行うことができた。一方で彼らは、たとえば女性や黒人といった層に平等を与えようとはしなかった。マイノリティを踏み台にしたともいえるが、時代的に他人に気を配っている余裕もなかったのだと思える。


経済については放任が基本路線だったが、大恐慌時のニューディール政策では公共事業へのばら撒きとともに失業者個人の救済など貧者について積極的な政策を行った。それまでは、黒人の支持政党は奴隷解放リンカーンがいた共和党だったが、以後は民主党になった。