AV時代―村西とおるとその時代

著者:本橋信宏
発行:2005年
AV時代―村西とおるとその時代 (幻冬舎アウトロー文庫)
村西とおるの元でAVを製作していた人の回想録。


もともと村西とおるビニ本と言われるきわどいエロ本を作っていたが、これらは摘発対象になりかねないため一般書店ではなく北大神田書店という自社の本屋で主に取り扱われるものだった。エロで儲かったので、次はエロ以外ってことで村西さんは出版社を設立。タレント本や写真週刊誌も作りはじめた。しかし、出版社と書店を結ぶ取次ぎといわれる流通を大手会社が押さえているため、エロじゃない本であっても一般の書店には並ばない。そこで、自社の本屋で販売することからスタートするのだが、ゆくゆくは販路を拡大して閉鎖的な取次ぎになぐりこみをかけるというのが村西の目的だったようだ。


著者はその写真週刊誌の製作で村西とおると関わりをもつ。その週刊誌はなかなか好評だったが、村西さんの逮捕で書店も雑誌の製作も一気に終わってしまう。
その後、村西さんがAVを作ろうとしたときに誘われAVの仕事をすることになる。AV出演からAV雑誌へのコメント書いたり広告の掲載や広告料の支払いなど色々やったようだ。もともとはライターであるが行き詰まりを感じていたという一方で全学連研究なんていう難しい本を書いたりして、やはりエロ以外の道を捨てきれないようである。当時20代後半だった著者やAV女優の青春物語といった趣もある。京大のAV女優である響奈美とも交際したのはちょっとうらやましい。


当時の京大総長のコメントの京大生が女優になったというよりは、そういう人が大学に入ってくるようになったというのは、確かに業界の人からすれば面白くないだろうね。


以下抜粋。


挿入後に精子を女優にかける顔面シャワーの開発により過激との評価を得る。ソフト路線の宇宙企画などとの差別化に成功。


ある女優がトシちゃんと寝たことあると言ったのをAVに収録したのを週刊ポストが記事にしたためジャニーズ事務所からクレームを受ける。小学館で直談判。来たのはメリー喜多川と娘とトシちゃん本人。
その様子を村西はこう語る。「トシちゃんはトシちゃん自身を振る舞っちゃってあの調子で『僕はこの子と寝てなんかいないよ、アハ』と言うんですよ。この期に及んでまだトシちゃんしちゃってるんだからね。」
その後村西はジャニーズに復讐するためにジャニーズ専門のたれこみダイヤルを開設、元フォーリーブス北公次接触し彼は暴露本を出すことになる。


村西はクリスタル映像を辞めてダイヤモンド映像を設立したが、数ヶ月はヒット作に恵まれなかった。最初に売れたのは松坂季実子。


一番衝撃を受けたのは黒木香の『SMぽいの好き』について。村西は黒木に笛を吹かせる。
まあまあかんじたときには一回。プー。
もっと感じたときには二回。プープー。
たまらないときには三回。プープープー。
「歯を食いしばりながら黒木香歓喜の波にさらわれないように必死に耐えている。凄い形相だ。
『いいわ!いいわ!見える!すごい!うごごっ!よいしょっ!』
耳を疑った。今、彼女は『よいしょっ』と言ったはずだ。いったい何なんだ?よいしょとは何だ。あの理性的な女子大生は気がふれてしまったのか?」


黒木さんというと腋毛が有名だけど、横浜国立大在学の才女だった。それにしてもこの描写はすごい。このビデオが週刊誌で取り上げられ彼女は文化人などとも対談を行ったということだが、彼女のビデオはそういった週刊誌やサブカルチャー的な楽しみ方をされただけで、おそらく本来の用途としては一般受けするようなものではなかったと推察される。その後、2000年代に彼女の現在の写真を載せた週刊誌の記事を私も見たが確かだいぶやつれていたように思う。それでも全裸だったので、風俗かなにかをしていたのかな。彼女の現在の幸福を祈るばかりだ。