かど番大関千代大海が執念見せる/夏場所
2009.5.14 20:03
進退を懸けて出場している千代大海が、現役への執念を見せるような激しい一番を制した。

 豊真将と押し合い、体が離れるたびに何度も頭でぶつかり合った。「途中から記憶が飛んだ。しかも相手の指が左目に入って、右目でしか見えなかった」。最後は出てくる相手を土俵際で右小手投げ。その後、意識がもうろうとして、しばらく立ち上がれなかった。

 連敗を2で止め、白星先行で序盤を終えた。33歳のかど番大関は「最後は気持ちだけ。本能だったよ」と価値ある1勝を喜んだ。

逆境にも闘争心かき立て、カド番大関奮闘中
 大相撲夏場所5日目(14日・両国国技館)──精根尽き果てた千代大海は、おなかを見せて土俵に転がった。


 史上最多13度目のカド番、がけっ縁の土俵で見せた執念。豊真将との激闘を制した大関は「途中で記憶が飛んだ。気持ちで勝った」とつぶやいた。

 2連勝と好発進の後、元気なく、2連敗。雲行きが怪しくなったこの日も、立ち合いで当たった直後に相手の指が左目に入り、視界がかすむピンチに陥った。しかし、そんな逆境が、消えかけていた闘争心をよみがえらせたのだろう。

 糖尿病などに加え、場所前は発熱に苦しむなど踏んだり、けったり。かつては、相手を一直線に押し出した突っ張りも今や威力は半減し、若手力士にあっさりと残された。だが、そこからが、ど根性。再三のいなしをこらえると、最後は右から捨て身の小手投げで、酸欠になりそうな攻防を制した。物言いはついたが、軍配通り。ヨロヨロと立ち上がった大関が勝ち名乗りを受けた。

 師匠の九重親方(元横綱千代の富士)は「九死に一生。最後まであきらめない気持ちがあった。執念の人だな」と、珍しく、弟子の奮闘をたたえた。敗れた豊真将は「自分の気持ちが弱かった」とうつむいたが、土俵人生の瀬戸際で奮闘する大関の背中に、まだまだ学ぶことがある。(向井太)

(2009年5月14日20時36分 読売新聞)