著者:上原善広
発行:2009年
ここでいう路地とは被差別部落のこと。著者自身が大阪の被差別部落出身である。
日本各地の路地をめぐって現地調査やインタビューをしたもの。よくいえば当事者の声を聞いたということになるが悪く言えば資料的なまとまりにかける。でも、それも仕方なくて現地の資料館などでも被差別部落についての資料などは残さないのである。
現在でも部落差別が残っているかというと地域差もあるが、ほとんどないようだ。特に若者の間では。ただ結婚のときや何か事件があったときに部落民が疑われるとかいうようなことはあるようである。
今後少子化が続いていくと、部落差別の意識はなくなっていくことだろう。それどころか被差別部落の集落ごとなくなる可能性もある。そういった意味でも、今の声を聴いたこの本は貴重である。
蘊蓄的な意味でも面白い。
・被差別部落出身者の進学率は低かった。昭和40年代から被差別部落出身者が進学する場合は返還の義務の必要がない奨学金が国から出ていたにも関わらずである。勉強なんかやってもむだとか、40年代にはスラム的な近所の兄ちゃん、姉ちゃんは不良ばかりといった環境も影響したのだろうか。
・東北の路地の多くは、元戦国大名が徳川幕府の命により移封されてきたときに従ってきた路地の者たちによってつくられたため、城下町にあることが多い。とのこと。
都市部のほうに被差別部落があるということか。
・被差別部落は関西では肉屋、関東以北では革製品を扱う仕事につくことが多い。
牛革を扱う仕事はさげすまれるが、鹿だとそのようには見られない。
・部落の門付け芸というのがある。玄関先でお祝いや人形芸などを披露し金銭などをもらうもの。その芸の一つに万歳というのがあり、これが漫才のルーツ。