不屈の棋士 (講談社現代新書)

不屈の棋士 (講談社現代新書)

千田翔太 棋士番号291

タイトル挑戦1回獲得なし 順位戦最高位B級1組

 

著者の大川慎太郎さんは将棋の観戦記者

この本は2016年のに発行されたもので、棋士のコンピュータに対する姿勢をインタビューしたものだ。

 

背景を説明すると2013年に、第3回将棋電王戦でコンピューターが現役プロ棋士に初勝利。プロ5人がそれぞれ異なったソフト5つと対局し、プロの1勝3敗1分。

2014年の第3回電王戦ではプロ棋士に事前に対戦相手のソフトとハードが貸し出されるというプロ有利なものだった。それでも1勝4敗でプロの負け越し。

2015年には情報処理学会が、トッププロ棋士に追いついているということでプロジェクト終了宣言を行った。

実際、2017年には佐藤天彦名人がコンピュータに2連敗して、コンピューターがプロを超えているのははっきりわかった。

 

インタビューをした2015年から2016年は微妙な時期である。もうコンピューターのほうが強いのは分かってはいたが、当時タイトルを持っていた羽生さんや渡辺さんはコンピューターと戦っていない。(渡辺さんは2007年にボナンザと戦ったがそのころコンピューターは弱かった。)

 

当然、コンピューターと戦わないのかという質問は出てくる。二人の答えは似た部分がある。準備が必要とか通常の人間との対局を犠牲にしなくてはならないから。そしてどちらもコンピューターがプロより強いとは言っていない。

まあ、それも当然といえば当然だろう。

 

そして、コンピューターを使って将棋を勉強することについては、この二人だけでなく他の棋士も同様のことを言っている。コンピューターに頼ると自分で考えなくなる、結果だけを覚えてもプロセスがわからなくては意味がないといったものだ。

 

この千田翔太さんは、インタビューを受けた11人では一番若い。若い世代でも特にコンピューターを使った研究に熱心ということである。

 

この本で知ったのだが、初期の電王戦には出場するとコンピュータとソフトがもらえて、それが出場する動機にもなったようである。ただ、コンピューターをもらった棋士がその後強くなったというわけでもないようで、やっぱり将棋の勉強に使うという意味ではコンピューターはしょせん情報なのであろう。