増補 頭脳勝負 ──将棋の世界 (ちくま文庫)

増補 頭脳勝負 ──将棋の世界 (ちくま文庫)

渡辺明 棋士番号235

タイトル獲得通算25期 うち名人1期

 

名人戦はいまさなかである。渡辺さんは防衛率が非常に高いがどうなるか。

 

渡辺さんは4番目の中学生棋士。そのまま若くしてタイトルも獲得。森内さんや羽生さん相手にはっきりと差をつけて勝ったときは、羽生世代の次は渡辺と思ったものだ。

しかし、それから後に低迷してしまう。将棋そのものが変わってきたのだろう。かつて渡辺さんが得意としていた、王様を固めて細い攻めをつなげて勝つという将棋がAIの影響か少なくなり、金銀は盤面全体をバランスよく配置し、スキがあれば序盤から仕掛けるといった将棋になった。また、渡辺さんが得意とする心理的な勝負術といったものも

そのままでは通用しなくなった、何か変化があったのだろう。

 

しかし、そのときでもタイトル1つは死守しており、その後、3冠を獲得するまでになった。現在タイトルホルダーは4人いるが、藤井聡太さんは未知数として、豊島さん、永瀬さん相手にはタイトル戦で負けていないので、最強に近い存在といっていかもしれない。

 

この本は、将棋というゲームの特性や特徴、対局がきまってからすることや対局中の考え方やトレーニングの方法など個人的なことから、将棋界の制度について、タイトル戦での心理状況などいろいろ語っている。渡辺さんはブログもやっているからか文章がうまい。

 

また、本音を語っていて、ある意味辛らつだ。

「四段が九段に勝った」これはそう珍しいことではないが「C級がA級に勝った」これは珍しい、とか。

 

面白い情報も入れてくれる。

「ある程度まで作戦を用意して、その範囲内は時間を使わないというのは今では当たり前ですが、そのきっかけを作ったのは森内九段だといわれています」

 

佐藤康光さんでの対局心理なども純粋に読み物として面白かった。