ふぞろいの林檎たち

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX
1983年放送。山田太一脚本。


いわゆる4流大学に入った大学生の男3人を中心とした群像劇。ストーリーそのものは今のホームドラマと大きな違いはない。つまりは、恋愛や就職や家族の問題などを描いているというわけだ。ただ、それらの問題の背景に時代性があって、それが面白い。


第1話のサブタイトルは「学校どこですか」、学歴差別や低学歴によるコンプレックスを表したもので、これが当時の新しい社会問題ということなのだろう。
ただし、当時の大学進学率は30%程度だったので、今と比較すると大学に行ったというだけで高学歴な部類である。それでも、この時代に学歴差別といったものが顕在化したのが興味深い。
たぶん、それ以前は経済的な理由で大学に入るという選択肢は当初からない人が大半である。そんな時代では大学に行ったというだけで、学力だけでなく家の財力という点でもエリート層のような意味あいがあった。しかし、80年代には勉強ができれば大学に行くというのが一般化しだして、大学に行ったというだけでは特別な存在にはならなくなってしまった。それすると、大学に行ったという層の中での序列というものが要求されるようになったというわけではないかと推察する。もっとも、70年頃の学生運動のさなかでも、やはり大学による序列のようなものはあったらしいが。


80年代前半の若者の風俗の描写も今となっては貴重な資料だ。若者の最先端文化だったディスコのほか、喫茶店に行く回数がやたらに多いのが今から見ればちょっと違和感がある。酒とたばこも、今のドラマでは描写がないだけに目立つのだが、それにしても多い。男同士で会うと必ず酒とたばこだ。
終盤にちょっとだけ出てきた学生運動の連中はどういう意味があるのか不明だが、たぶん当時の世相を反映している風俗や文化をできるだけとりいれておくという脚本家の意向だろう。後の時代から評価されることも頭にあったのかもしれない。


主人公が風俗店に行く描写もリアルといえばリアルである。女は性を売り物にすることをどんどん厭わなくなった。そこが男にはたまらなくつらい。ここまではリアルである。その女はどこかで心の傷を抱えている。しかし、これは男の幻想だろう。


ドラマ中にあった人物間のあつれきが最後になってもほとんど解決されていないのが、なんかすごい。続編をもともと考慮に入れていたのか、それとも人間関係の問題なんて簡単に解決するものではないとのメッセージなのか。続編も機会があったら見よう。