モノづくり幻想が日本経済をダメにする―変わる世界、変わらない日本

モノづくり幻想が日本経済をダメにする―変わる世界、変わらない日本
なにやら挑発的なタイトルである。
著者の野口悠紀雄さんは一昔前に書いた超整理法とかがベストセラーになった。


この本は雑誌に連載された記事を収録した本で、日本の経済問題について語っている。実は、ものづくりに言及している部分は少ない。
その主張は、日本が得意としている「ものづくり」は、安定した品質の製品を大量生産することであるが、この種のものづくりは中国などと価格競争に巻き込まれる。他と同じことをやっていてはダメというもの。


今の日本の主要産業である自動車等の製造業は今後もずっと安泰であるとはいえない。また産業そのものは堅調でも、工場は人件費の安い国に移転することが必然のため国内の労働市場を支えていくことはできないだろう。これからの日本を支える産業は新興国では追いつけないものでなくてはならない。
金融業に力を入れることが必要。第一に規制緩和を行うことである。イギリスは金融の規制緩和を行ったところ外資の参入により再び成長することができた。同じヨーロッパでも製造業に固執するドイツは遅れたままである。


他、豆知識。
・地方では駅前の商店街が瀕死状態になっている。企業が土地を買い上げて再開発すればいいのだが、そうされないのは相続税の制度のためである。親の事業を継承する場合には土地の相続税が軽減されるのである。そのため、節税のためだけに商店が営まれ商店街はさびれたままになる。
アメリカの若者はIT技術を勉強しようと思わなくなってきている。インド人や中国人が参入してくるため、賃金が押し下げられていくが予想されるから。一方で日本では言葉の壁があるため、影響を受けずにすむ可能性がある。
郵政民営化は良くない。郵政の大きな問題は集まった郵便貯金特殊法人などに貸し付けられ、不要な天下り先を肥えさせるだけになっていたという批判があったことだ。しかし、それなら貯金事業だけを縮小させればよかった。
民営化されたため、郵政は新たな資金の運用先を開拓せねばならなくなった。銀行をはじめとする他の金融機関との競争になるが、条件が対等になっているかどうか問題がある。


と読んでみたのだが、新しい国の形というのが正直見えなかった。日本でITがブームになってしばらくたつが、日本の基幹産業となるような企業は出てきてないように思う。そもそも日本オリジナルというのがあまりないようだ。ニコニコ動画だろうか?アニメをはじめとするコンテンツ産業になるのかな。
日本というか日本人の強みというのは均質性だろう。製造業以外でもそれを活かせれば良いのだが。
外資の積極的導入というのには、雇用を好き勝手にいじられたり再び売却されたりしそうで、あまり良いイメージを持っていないのだがどうなのでしょう。イギリスの会社がどうなったか興味がある。