日経新聞の思い出

学生時代には日経新聞を購読していた。今はまったく喪失しているが、学生時代には見栄と向上心が少しだけあったのだ。といっても、ほとんど身についていない。当時は株にはまったく興味がなかったし、ゲーム業界以外の産業界の動きなんて、記事を読んでいるくらいでは少しも実感がわかなかった。加えて、日経は政治面や社会面がとんと弱いときている。もっぱら読むのは文化面と裏一面だった。
そんななかで、印象に残っているコーナーがある。毎日だか週に1回だったか忘れたが、いろいろな人がお金に関する考え方を述べるというもの。今でもやっているのかな。スポーツ選手や芸能人のお金に関する考え方がイメージと違っていたりすると面白い。
なかでもイッセー尾形のものは、とても記憶に残っている。このイッセー尾形という人、実は私は今でもよく知らないのだが、芸人で通に受けるシュールな芸をするというのだけは話に聞いたことがあった。芸人といえば金には頓着しないイメージがある、しかも彼の外見は、なにやら前衛っぽい芸術家のような雰囲気を漂わせている。ところが、そのときの新聞の見出しはたしかこんな感じだった。世の中の悩み、お金があれば9割は解決。今にして思えば、そんなドライな考えがシュールな芸を生んでいるのだと理解できるが、当時モラトリアム学生だった僕は彼がそんな身もふたもない考えを持っていることに軽い衝撃を受け、社会の汚さや厳しさを見せ付けられたようで、とても不安になった。たぶん、その後の僕の行動に多少影響を与えたと思う。