作者不詳
平安時代中期成立
宇津保物語と書かれることもあるが宇津保は当て字で、字そのものに意味はない。うつほとは空洞の意味で、物語中母子が空洞にいたとかいうことで、物語全体を表すタイトルでもないようだ。
日本最初の長編物語。
遣唐使がどこかに流れ着いて仙人に琴を習った人がいる。それから親子4代にわたって物語が展開される。親子4代ばかりがフィーチャーされているわけでもなく、皇太子の結婚相手がだれかとか次の皇太子は誰かというので話が展開したりもするので大きな視点の歴史物語といえる。
あと、琴を演奏すると天人がくるとかいうSF的な要素もあるが、それもちょっとだけなので、とらえどころがない話だ。作者も何人かいるとの説がある。
一番面白いと思ったのは、解説の部分で、この本は平安貴族の間で読まれていたらしいということ。清少納言も紫式部も読んでいたそうだ。
そして、作中に仲忠と涼という男が出てくるが、清少納言は仲忠びいきだったということだ。
私が読んだのは抄訳のせいもあるだろうが、二人について詳しく描写されているわけではないので、どっちも同じような男と思った。ただ、生まれや育ちという設定が違っているので、そこに平安貴族は違いを見出し、推しというやつを見つけたのだろうか。
日本初、ひょっとしたら世界初の推しである。
今だったら二人のやおい本がつくられているだろうが、当時はそこまではいっていなかっただろう。いや、あるいは。