介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました

介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました

今泉健司 棋士番号299

タイトル挑戦なし 順位戦最高位C級2組

 

瀬川さんと同じように、奨励会三段で退会したものの、その後プロ編入試験を受けてプロ入り。41歳のデビューである。

NHK杯戦では藤井聡太さんに勝った。史上最年長で棋士になった今泉さんが史上最年少で棋士になった藤井聡太さんに勝ったわけである。

 

この本は将棋を覚えてからプロ入りするまでの自伝本。当然、瀬川さんと同じような構成である。

やっぱり興味深いのは奨励会時代の部分だ。

久保利明さんは奨励会のときから別格のつよさだったようである。中座さんが奇跡的に昇段したときの最後の対局相手が今泉さんなどなど、その後プロになった人との関係性が面白い。

そして、26歳の年齢制限がきたときには、中学生の渡辺明さんがやってきてしまう。

 

ただ、今泉さんも次点を2回取ってるだけあって、プロ入りする力は十分あった。それなのにあがれなかったのは本人もいってるようにメンタル面の波を抑えられなかったことだろう。形勢がいいときは楽観してしまったり、負けると連敗癖があるなどだ。

あとは、遊んでしまったことだろう。奨励会退会後、別の制度でもう一度4期だけ三段リーグに加入できる制度があった。しかし、彼はそのときパチスロにはまってしまうのである。

 

飲食店や介護士の道を経てプロ入り。

 

将棋界の裏話的なものも面白かった。

かつては棋士は高校を卒業するほうが珍しく、今泉さんの少し前の世代では高校進学すると「保険」とか「日和った」などと陰口の対象になったそうである。

 

関西では今も「今泉理論」が語り継がれている。金銀を7枚持てば必勝、6枚なら優勢。

 

かつての棋士室はたばこの煙が一日中たちこめ、テレビは常に野球か競馬。練習将棋を指していると「じゃまやからあっちに行け」と言われたほどだった。