土佐日記

土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

934年ごろに書かれたといわれる日本初めての日記文学

著者は紀貫之

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。

 

という出だしは有名だ。現代でも、おっさんが女子高生のline文体をまねることがある。

 

ただ、当時の男の文体、女の文体など私には見分けがつかない。それよりも、自分をモデルにした人物を第三者の立場から描写しているという技法がなかなか斬新だと思った。

 

土佐での4年間の国司(知事みたいなもの)の任期を終えて土佐から京へ帰る記録である。

 

土佐での新任の国司とのあいさつや関係者からのお見送り。悪天候が続き何日も足止めをくらい歌を詠むだけで一日が終わる倦怠感。船が進んだと思ったら、海賊が多数いる瀬戸内海を渡らなくてはならないなど緊張感もあり、場面の多彩さは、現代の紀行番組を見るようなエンターテイメント性がある。

 

そして淀川から京都へ向かい、荒れ果てた数年前に住んでいた家にたどりつく。道中でもたびたび詠んでいた亡き子の思い出の歌を詠んで物語は終わる。そのせいだろうか。他愛のないエピソードのなかでも、どこか無常を感じるのだ。