覆す力 (小学館新書)

覆す力 (小学館新書)

森内俊之  棋士番号183

タイトル獲得12期、十八世名人資格所有

 

強靭な受けから鉄板流の異名を持つ。

 

森内さんは、地味に強いながらも派手さはなく、永世名人を羽生さんより早く獲得するも他の棋戦での勝率はかんばしくなく(3割名人と呼ばれたと自分で書いている)、あまり好きな棋士ではなかった。

 

2014年に発行されたこの本は、森内さんが将棋を覚えたときから奨励会に入って島研に参加、プロになってタイトルで他の棋士と取ったり取られたりするまでのことが書いてある。タイトル戦での心理なども書かれている。

あまり自分のことを語りたがる人ではないように思っていたので意外だった。そして2016年にA級から陥落するとフリークラスに転出している。第一線から退く日は近いと思ってこの本を書いたのかもしれない。

 

ライバルは羽生さんかと思いきや、小学生の頃に森内さんが初段にたいし羽生さんは4段で、もう差がついていた。奨励会でも羽生さんは別格でライバルという感じではなかったようである。それよりも、同期や年下の佐藤さん、郷田さん、三浦さんといった人が先にタイトルを取ったことがつらかったようである。

 

覆す力とあるが、特別な秘訣はない。地道な努力である。そしてスランプは力を貯めるインプット。インプットの時間が長いほどアウトプットは爆発的になる。

 

勝つためにこだわりを捨てて、序盤は研究の成果に頼るように頭を切り替えた。あるように、やっぱり途中で正しい将棋より勝つ将棋に切り替えたようである。

 

逆転の妙手はないが、逆転を許す悪手はあるというのは森内将棋を表す言葉であろう。

 

過去のエピソードで面白い部分

奨励会員でファミレスに行くとじゃんけんで負けたものが支払う。森内さんは皆の出す手の傾向を覚えていたのであまり支払ったことがない。支払う人はだいたい決まっていた。

島研では負けると段位×1000円の罰金を支払う。積立金総取りは12勝1敗。羽生さんが取りそうになったので規定を変えた。

島研解散時には200万円近く溜まっていたので温泉旅行と残ったお金で駒を買った。

成長段階で勝ち負けの理想のバランスは7対3くらい